1.問題解決思考9ステップによるG-PDCAの実践
2.ステップ4:目標の設定
3.ステップ5:要因の分析問題解決思考の前提として
4.ステップ6:対策の立案
具体的な9つのステップによって問題解決をするという考え方の「問題解決思考9ステップ」。
今回は【ステップ4:目標の設定】【ステップ5:要因の分析】【ステップ6:対策の立案】について解説いたします。
下記に改めてG-PDCAを具体的に進めるための「問題解決思考9ステップ」を表記いたしました。その全体像と【ステップ1:取組みテーマを決定】【ステップ2:問題の明確化】【ステップ3:現状分析】についてまだお読みいただいていない方はぜひこちらからご確認ください。
<問題解決思考9ステップ>
(ステップ1~3に関する記事はこちらから)
ステップ3の「現状分析」で、問題を解決するためにインパクトの大きい「問題点」を洗い出し優先順位を決めました。ステップ4では優先順位の高い問題点から具体的な「目標の設定」をしていきます。複数の問題点についてそれぞれ目標の設定を行い、同時並行で取り組んでも構いません。
絞った「問題点」について「目標の設定」をして取り組むことで問題解決に向けて前進させていくことができます。
しかし、「問題点」の洗い出しと優先順位付けが誤っている状態だった場合、ステップ4以降の取組みが問題解決に繋がらない可能性があります。ステップ4でうまく目標を設定ができないと感じる方は、ステップ3を振り返ってみて下さい。
また目標を設定する際に「SMARTの法則」を活用することをおすすめします。
「目標の設定」において重要な要素は下記の通りです。
・設定した目標を達成するために具体的な設定ができているか
・設定した目標に対してどこまで達成できているかの進捗管理を適切に行えているか
・設定した目標に対して、実践した結果の評価を適切に行えているか
この要素を満たすために、「SMARTの法則」を活かすことができます。
S:Specific 「具体的な」
誰が聞いても同じ認識が持てるような具体的な目標になっているか
設定された目標に対して、達成しているのかしていないのかを明確に判断するためにも具体性は欠かせません。
例:この新商品をヒットさせよう
例で言えば、ヒットの定義がされていないため、認識が人それぞれ異なる危険性があります。「新商品を100個売ればヒットした」という人もいれば、「新商品に関する満足度が10段階中8以上の人が8割以上いたためヒットした」という人もいるでしょう。
そのため、
・合計3000個売る
・新規顧客との取引を500社増やす
など、目標を達成したかが明確に判断できる「具体的な」目標を設定することが重要となります。
M:Measurable 「測定可能な」
計量化できる目標になっているか
目標達成に向けて懸命に努力していても、結果が目に見える状態でなければ達成に向かっているかどうかがわかりません。
例:部下とコミュニケーションをたくさんとる
上司が部下と30分会話することが出来た時、コミュニケーションをたくさんとれたと思う人もいれば、あまりとれなかったと感じる人もいます。
・週に1回30分面談を実施する
上記であれば、回数も時間も測定することができます。数値などを用いて測定することで目標達成までの進捗が分かる設定をしましょう。
A:Achievable 「達成可能な」
現実的で達成すること可能な目標を設定しているか
より高い成果を求めるがために、非現実的な目標を設定することで、モチベーションの低下や目標設定自体の意味を失ってしまうことは避けたいものです。
(1)物理的に不可能と思われる設定は回避する
顧客との平均面談時間が60分であるなか、「1日あたり7件の面談を実施する」事は物理的に不可能です。
(2)成長を促進し得る設定にする
成長が停滞するような簡単に達成できてしまう設定ではなく、社員の能力や実績を根拠に「頑張れば達成できる目標か」をチェックして設定します。
(3)達成があまりにも難しいた目標設定はしない
思考・行動を初めから停止して諦めてしまうような目標の設定は避けましょう。
R:Relevant 「関連した」
テーマに関連する内容となっているか
正に今回の「問題解決思考9ステップ」における目標の設定の在り方です。
(1)設定した目標が問題解決に繋がっているか
テーマ設定した事柄についての問題を解決するために、それに繋がる「問題点」を目標として設定することが重要です。
(2)目標達成が自身にポジティブな影響があるか
目標を達成することが、自身にポジティブな影響(キャリアアップ/収入アップなど)を与えるかという関連性があるかを考えましょう。ポジティブな影響を見込める目標設定ができると、モチベーションの向上にも繋がりやすくなります。
目標を達成するための行動により、スキルアップが見込まれるといったことも関連することに含みます。
T:Time-bound 「期限を定めた」
いつまでにやるかを設定しているか
問題解決に限らずビジネスにおいて最重要である「期限」。
目標達成が先延ばしになったり、「絵に描いた餅」の状態に陥ることを避けるためにも必ず設定しましょう。「いつまでに」があるからこそ「今何をすべき」という計画が立てられます。取組みのスピードを高め、集中力を高める効果もあります。
ステップ4で設定した目標に対して、現状の自分が目標が達成できていない(問題点が発生している)要因を分析しましょう。
具体的には、
(1)多くの要因を洗い出す
(2)「なぜ」を繰り返し要因を深掘りしていく
(3)深堀りして「真因(=問題点を発生させる影響力が大きい要因)」を絞り込む
ステップ5のゴールは真因を特定するところまでとなっています。また要因の分析にはフレームワークのロジックツリーが有効的です。
◆ロジックツリーによる要因の分析
(1)多くの要因を洗い出す
正しく要因を洗い出し深掘りするために、多くの要因を「MECE」な構造で洗い出していきましょう。「MECE」とは日本語で「もれなくダブりなく」という意味です。分解した要素について四則演算(+/-/×/÷)で考えると「MECE」が実現できるケースが多いです。
例1:「人間」をMECEで分類する
<正しい分類>
・自分と他人(人間=自分+他人)
・血液型がA型、B型、AB型、O型(人間の血液型=A型+B型+AB型+O型)
・20歳未満、20代、30代、40代、50歳以上(人間の年齢=20才未満+20代+30代+40代+50崔以上)
<誤っている分類>
・未成年、成人男性、女性
漏れ:未成年男性
ダブり:未成年の女性
・会社員、学生
漏れ:主婦、未就学児 など
例2:「売上」をMECEで分類する
<正しい分類>
単価、数量(売上=単価×数量)
例3:「利益」をMECEで分類する
<正しい分類>
売上、コスト(利益=売上-コスト)
例の様々な視点を持つことで、ある事柄を深堀りし分類することができるようになります。
問題点が発生する要因も同様で、
・外的要因と内的要因
・人に起因する要因と人以外が起因する要因
などの視点から深掘りしていくことで、多くの要因を洗い出すことができます。
(2)「なぜ」を繰り返し要因を深掘りしていく
「なぜ」を繰り返しロジックツリーを作成していくと、枝葉が増えていきます。限界まで枝葉が出てくるとその要因が深掘りしきったことになります。
(3)深堀りして「真因(=問題点を発生させる影響力が大きい要因)」を絞り込む
深掘りしていくと、ロジックツリーの多くの枝葉から同じ要因が複数出てくるでしょう。「問題点を発生させる影響力が大きい要因(=真因)」である可能性があります。真因は1つ潰すと複数の問題を解決させる効果性があるため、ロジックツリーを作成した後は真因でありそうなものを絞り込んでいきましょう。
ロジックツリーが上手く作成出来ない方は、一度作成したものを俯瞰してみて下さい。
・MECEになっていない
・異なる視点の要因が洗い出せていない
などで分類しきれていないのかもしれません。
ステップ5における「要因の分析」を基に、ステップ6の「対策の立案」を行っていきます。設定した目標を適切に達成するためにも、「確からしさ」が認められる「要因の分析」を行っておきましょう
(1)真因ごとに対策案を洗い出す
特定した真因に対して「対策案」を洗い出しましょう。実現可能性などは考慮せず、真因ごとに思いつく限り複数の対策案を出しておくことが重要です。
(2)実行すべき対策案を絞り込む
洗い出した複数の対策案の中から、実行すべき対策案を絞り込みましょう。絞り込むために「ペイオフマトリクス」や「意思決定マトリクス」などを活用して、対策案ごとに評価し絞り込みを行います。
◆ペイオフマトリクス
「効果性」と「実現可能性」の2軸で区切ったマトリクスを使い、有効な対策案を評価して絞り込むフレームワークです。始めにマトリクスを作成して、洗い出したそれぞれの対策案がどこに位置するかを検討しましょう。
・効果性が高い×実現可能性が非常に低い
・効果性はやや低い×実現可能性が非常に高い
マトリクスで対策案を位置づけしておくことで、状況に応じた有効な対策案を選ぶことができるようになります。
◆意思決定マトリクス
複数洗い出した対策案それぞれについて、評価項目を決めて点数化するのが意思決定マトリクスです。
始めに目標を達成するために考慮すべき項目を評価項目としてあげましょう。
評価項目の例:
・予想効果 ・実現性(容易性) ・コスト
・工数 ・即効性
次に評価項目ごとの重要度に合わせて、倍率を設定しましょう。点数を付ける際に各項目の倍数分かけることで、効果性が高い対策案を絞り込むことができます。
最後に、複数の対策案を評価項目に対して点数をつけていき、合計点が最も高い対策案が優先的に取り組むべき対策案であると判断することができます。
(3)絞り込んだ対策案で具体的な計画を設計する
「ペイオフマトリクス」や「意思決定マトリクス」を活用して、真因に対する実行すべき対策案を絞り込んだら具体的な計画を立てていきましょう。具体的なイメージができる段階まで計画に落とし込むことが必要です。
<計画のポイント>
目標の達成期限から逆算して、いつまでにどの状態になっている必要があるのか
具体的にどのような行動をいつまでにどのくらい(行動自体の量や期日)実行する必要があるのか
自分以外にどんな実行者、関係者の協力を得る必要があるのか
計画の進捗をどのようなタイミングで確認するのか
もし進捗が良くない場合にはどのような対処を取ることで改善が見込めるのか
また、 計画が設計出来たら、関係者と合意形成をとりましょう。
(1)~(3)を通じて対策の立案ができれば、いよいよ実践です。
実践が目標の達成、問題解決に繋がるよう、ステップ1からステップ6が「確からしさ」で担保されている状態にすることが重要です。【ステップ7:対策の実践】【ステップ8:振り返り※検証】【ステップ9:成果の標準化】 については次回引き続きお伝えさせていただきます。ぜひご覧ください。
宮田 純(みやた じゅん)
ソフトブレーン・サービス株式会社 シニアコンサルタント
一般財団法人 プロセスマネジメント大学 事務局長
1977年(昭和52年)、北海道出身。
大学卒業後、新卒で人材サービス会社に入社(営業職)。25歳で営業リーダー。30歳でBPO事業を立ち上げ、営業、業務設計、人員採用、業務マネジメント、PJT管理、一連の全ての業務を行い、事業化を推進。3年間で110名の事業本部となる。
その後、医療に特化した人材サービス会社に転職。営業部門の事業部長。72名のマネジメントを行い、業績向上、入社1年2ヶ月後のマザーズ上場に貢献。「遠隔診療」事業を立ち上げ、政府が推進している遠隔診療事業化のさきがけとなり、1年で正式な事業部のひとつとなる。続けて「看護・介護派遣」事業を立ち上げ、同じく1年で事業部となる。
上記の経験を活かし、ソフトブレーン・サービスに入社し、現在に至る。
頂いた個人情報は、ソフトブレーン・グループ内にて共有させて頂きます。ご了承の程、よろしくお願い致します。