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Useful-Information お役立ち情報 営業研究結果に見る日本企業の営業課題<記事>

INDEX

1.本稿における「営業」の定義
2.これまでの研究成果①(営業メンバーへのアンケート・スキル調査)
3.これまでの研究成果②(営業組織のマニュアル・指導本活用)
4.考察・まとめ


こんにちは。ソフトブレーン・サービスのR&Dグループです。
我々は、営業組織の課題解決のため、営業の皆さんにサーベイの提供を行ったり、営業そのものをどのようにとらえるべきかという研究をしたりしています。

本稿ではこれまでの研究成果のエッセンスを伝えていきたいと思います。

冒頭ではまず『営業』をどう捉え、どのような角度からメスをいれて研究しているかお話します。
その後、研究成果を2つの章に分けてお伝えします。

 

1.本稿のおける「営業」の定義

流通用語辞典より引用すると

‐広義では企業などが利益を得るために事業を行うことであり、営業活動、営業時間などといった使い方をする。
‐狭義では、生産や製造などと同様に、販売活動や販促活動を中心とした顧客を対象とする業務を意味する。
‐販売という言葉と混同されることが多いが、販売は商品のセールス業務そのものだけをさすのに対し、営業は市場や顧客を対象とするすべての業務を含むより大きな概念である。(後略)
営業の中には、「販売促進という『マーケティング』」「販売という『セールス』」といった市場や顧客を対象とした活動にすべて関与していることがわかります※1。

※1日本以外の国では「マーケティング」と「セールス」は分断されており、営業という言葉は存在しません。

では企業活動の一つとして「営業」を考えたとき、具体的な活動内容はどのようなものとなるでしょうか。

・新規顧客の開拓を目的に、可能性のある企業をリストアップして大量にアプローチをして働く営業
・既存顧客の維持を目的に、お客様からの問い合わせを1件ずつ丁寧にフォローして価値を提供する営業
上記の通り、「営業」する中で掲げる目的・アプローチ手法は企業や業種ごとに異なってきます。全く同じ「営業」は存在しないと言えます。しかし、抽象化すると共通しているポイントが出てきます。

<5つの営業プロセス>

1.事前準備
2.アプローチ
3.ヒアリング
4.プレゼンテーション
5.クロージング
営業組織のすべてが、5つの営業プロセスに沿って活動しています。

本研究では、5つの営業プロセスとともに、営業パフォーマンスに影響を与える要素4つを定義しています。

<4つの営業パフォーマンスに影響を与える要素>

1.エンゲージメント
2.マネジメントスキル
3.営業マーケティング力
4.セールススキル
次項から研究成果について解説いたします。

 

2.これまでの研究成果①(営業メンバーへのアンケート・スキル調査)

始めに営業活動に関する調査についてお伝えします。6993名の営業パーソンに対して実施しました。

<調査の概要>

質問数:約170問
回答期間:2017年~2021年
回答数:6993名を調査
対象者:営業部門に所属している方、営業活動をしている方
調査内容:所属の営業組織についての基本的な質問。営業活動上の行動や認識について営業担当者がどのような営業行動をとるのかを調査。

<調査内容の詳細>

(1)エンゲージメント

・自組織のビジョンや企業理念を理解しているか
・自らのスキルアップ・キャリアパスを描けているかどうか

(2)マネジメント

・営業活動上の目標・予算を理解し、達成のための計画を立てたうえで日々の必要な行動数を意識・実行しているか
・案件の進捗管理を怠ることなく、複数の顧客をフォローする上で案件ごとにステータスを客観的に管理・判断できているか

(3)マーケティング

・顧客業界のトレンドやニーズを理解しているか
・自社サービスがどのような顧客にマッチするのかを明確にできているか
・競合と自社の違いを理解して説明できるか

(4)セールス

・「事前準備」「アプローチ」「ヒアリング」「プレゼンテーション」「クロージング」の5段階においてそれぞれ行動できているか

自身の行動を様々な質問で振り返っていただきました(7段階評価)。

また、(1)~(4)において優秀者(※)である営業と、それ以外の営業でどのような差があったのかを集計・分析しました。

※優秀者の定義:業種・業界問わず、社内での表彰歴の有無。

 

<調査結果の概要>

優秀者の方が行動のレベルは高い結果となりました。例えば『市場の競合把握ができている』という内容に対し、優秀者は65.5ポイントなのに対しその他は57ポイントでした。

この調査から、優秀者とそれ以外の営業で差がつきやすい箇所についてピックアップしました。以下のような項目が上位となりました。

(1)目標から逆算

「営業担当の個人・集団目標の金額(ないしはそれに代わる指標)を把握して行動数の目標も割り出しているかどうか」という観点です。

ゴール指標(KGI)と中間指標(KPI)を設計した上で、目標行動を数値化・把握できているかをスコア化しました。

その結果、優秀者ではない営業は「目標数値を言えるか」という設問に対し「言えない」を選択する方が多く顕著でした。目標金額を言えない営業が多いということになります。

俯瞰的に見れば、目標を明確にできていない営業組織が少なくないという可能性を示唆しています。

(2)市場の競合把握

「自社サービス・事業内容と競合しやすい企業をどれだけ認識しているか」という観点です。

競合把握のポイントとして、「競合企業名」「価格帯」「強み」「自社との違い」などが挙げられます。

調査の結果、「競合の価格帯」や「競合の強み」の理解度で差異がありました。優秀者は、自社のみならず他社製品・サービスに関する知識を豊富に身に着けており、他の営業と差をつけているポイントであることが判明しました。

(3)面談のゴール

「事前準備の段階で、面談中の進め方や面談の内容をどのように設計しているか」という観点です。

事前準備の段階では商談の全てを予測することはできません。しかし、優秀者は事前準備の段階で、予測できる範囲の中で複数の「面談の着地点」を用意する傾向が強く出ました。全てを予測できない中でも工夫する意図が見られます。

(1)~(3)から、営業スキルで重要な3つのポイントが明らかになりました。

・マネジメント・目標管理
・競合の把握
・面談の設計

上記のスキルが、あらゆる組織でも求められるということは明白と言えるでしょう。

 

3.これまでの研究成果②(営業組織のマニュアル・指導本活用)

調査内容は、『営業マニュアルと教育』というもので、この調査の概要は以下となります。

<調査の概要>
質問数:37問
回答数:667社
対象者:営業職、営業部門の教育や施策に関わる部門に所属している方
調査内容:所属の営業組織についての基本的な質問。マニュアルの内容・使用・活用・教育体制・教育効果について

<調査結果の概要>
(1)営業マニュアルは約3割の企業にしか存在しない
(2)営業マニュアルが存在している企業のうち、現場で見直し・改定する機能がある組織は約2割
(3)営業マニュアルとして記載されている内容と、現場が求めている内容に違いがある

<調査結果の詳細>
調査結果の概要に取り上げた(3)の詳細を以下より記載します。

①営業マニュアルに書いてある内容として多い内容
1位:会社案内・パンフレット
2位:営業プロセス(手順)
3位:業務上の手続き事項など
(参照:画像左側のグラフ『営業マニュアルに書いてある実際の内容』の集計結果)

②営業マニュアルに書いてあるとよい内容
1位:競争優位性・商品の強み
2位:成功事例・失敗事例・クレーム集
3位:切り返しのトーク
(参照:画像右側のグラフ『営業マニュアルに書いてあるとよい内容』の集計結果)

①は企業が実際に用意しているマニュアルについて、②は現場がマニュアルに欲している内容について示しています。
①と②比較すると、企業で用意されているマニュアルは、いまだ十分に現場が欲している内容に対応できていない段階であることが分かります。
また、現状のマニュアルには、会社概要・営業上の手順など大きな枠組みでの内容が記載されている企業が多いようです。
一方で現場が欲しているものは商談などで使える具体的なQ&A集に近いものであるようです。特に1位の競争優位性というポイントは前半の章でも触れた『市場の競合把握』の内容と一致しています。

 

4.考察・まとめ

今回2つの研究から、以下のような結論が導き出されました。

(1)優秀な営業とそれ以外の営業で差がつくポイントは、「マネジメント」「マーケティング」「セールス」の3分野にわたる
販売活動を示す「セールス」だけが営業の重要なファクターではないということがわかりました。目標から逆算して考えるといった自身の営業活動を管理する「マネジメント」と、競合他社との違いを見極める力の「マーケティング」も営業には必要と言えるでしょう。

(2)企業の考える教育と現場が求める教育に齟齬がある
企業が用意したマニュアルの内容は、営業プロセス(手順)や業務上の手続きといった表層的なものでした。一方、現場が求めるマニュアルは、「競争優位性」「商品の強み」や「成功事例」「失敗事例」など営業活動に役立てる具体的なものでした。
現場の営業が求める「競争優位性」や「商品の強み」は、営業メンバーへのアンケート・スキル調査でいう「マーケティング」に該当します。このことから、現場は営業活動で成果を出すために「セールス」だけでなく「マーケティング」のような要素も必要であることに気づいていると言えるでしょう。
しかし、企業が用意している現状のマニュアルを見れば、営業する上で重要である「マーケティング」「マネジメント」を教育・管理する体制づくりが追いついていないことを示しています。

(1)と(2)を通して、最も大事と言えるポイントは現場の知恵を具体化することです。

組織の目線で言えば、マニュアルのような施策において現場が求める知恵を教育体制に落とし込むことが必要です。営業個人の目線で言えば、優秀者が兼ね備えているスキルを習得するために、具体的に成すべきことを把握することが求められます。
いきなり組織の教育体制を変えることも、優秀な営業になるためのスキル・知恵を習得することも難しいかと思われます。

まずは、2つの調査で判明したポイントをもとに、自社の営業力強化を考える上で
①個人に必要なスキルが何かを把握できているか
②組織の教育が営業のスキル向上に繋がり、優秀者を輩出する環境になっているか
この点を振り返ってみることから始めるのも良いのではないでしょうか。

 

プロフィール(本コンテンツ作成者)

松本 僚(まつもと りょう)
ソフトブレーン・サービス株式会社 コンサルタント

2018年新卒でソフトブレーン・サービス(株)に入社。
都内の中高校一貫校に進学後、6年間陸上部に所属。走高跳で都の指定強化選手に選出。
大学時代には陸上部以外にも、留学生支援の学生団体会長を務める。
大学での専攻と活動を通じ、組織内の人材育成やコミュニケーションに興味をもち、同社に新卒で入社。

営業コンサルティング活動を通じて、経営者・企業幹部の方の営業課題解決のサポートを行う。
企業個別コンサルティングのアシスタントや、アセスメントの導入・説明に関する講師を担当している。

 

 

 

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