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今上場企業に求められる「人的資本経営」の背景と 営業組織におけるその実践法の考察<記事>

INDEX

1.今、なぜ「人的資本経営」が求められているのか?
2.今後、経営者はどのような「人的KPI」を指標設定し活用すべきなのか?
3.今後、営業担当役員は、社内外に対してどのような「人的KPI」を活用してゆけば良いのか?
4.営業部門における「能力値・コンピテンシーレート」をどのようにすれば計測できるのか?

 

1.今、なぜ「人的資本経営」が求められているのか?

そもそも「人的資本経営」とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方を意味します。

この考え方は2014年にEUが非財務情報開示指令(NFRD)において、「社会と従業員」を含む情報開示を義務づけ (従業員500人以上の企業対象)を実施したことに端を発しました。

<2014年以降の動き>
2019年 ISOが人的資本マネジメントに関して、社内議論用・社外開示用の指標を整理(ISO30414)
2019年 米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)が改訂版スタンダードを公表 (人的資本の領域について、重要項目の開示を要求)
2020年 米国証券取引委員会(SEC)が人的資本に関する情報開示を義務化 (Regulation S-K改正)
※SECは、事業者が事業を運営するうえで重視している人的資本に関する取組や 目標についての説明を要求
2021年 ECが非財務情報開示指令の改定案を発表(対象企業の拡大、開示情報の更なる具体化)
また、「投資家として現状数字に表れない非財務情報もコント投資をしていくうえで非常に重要な判断基準になる」という趣旨で
ブラックロック・ラリー・フィンク会長がCEOレターで記しています。

日本においても、経済産業省を中心に伊藤 邦雄 一橋大学 CFO 教育研究センター長を座長に迎えた後に動きがありました。

2020年 持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会発足
2020年 通称「人材版伊藤レポート」発表
2021年 改訂コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)(※金融庁・東京証券取引所共同策定)

世界的にも国内においても人的資本経営の考え方が急速に普及しています。そこで経済産業省が様々な調査を実施し、公表しています(以下一部抜粋)。

<調査結果の概要>
・日本企業の多くは人材マネジメントを効果的に実践できていない
‐「効果的に実践できていると思う」4.0%
‐「どちらかというと効果的に実践できていると思う」24.0%で、
‐合計で「効果的に実践できている」のはわずか28%。
・日本の人事部門は価値提供部門(バリュードライバー)ではなく、管理部門(アドミニストレーター)と考えている人
‐日本では60%で、グローバル平均46%に比べて14%も高い。

・人材マネジメントの課題(複数回答)
‐「人材戦略が経営戦略と紐づいていない」33.7%で第1位。

・他部門と兼務せず、人事部門に特化したCHROや人事担当役員の設置状況
‐外資系企業が37.7%に対し、日系企業は12.8%にとどまる。

・企業における人材関連情報の発信として、人的KPIが占める割合は増加傾向にはあるが、直近2018年でも16%にとどまる。
‐人的KPIの上位3項目は、「従業員数」54%、「女性管理者数・比率」40%、「女性職員数・比率」19%。

・個人と組織の関係性として、APACの14か国・地域対象の調査で、現在の勤務先で継続して働きたいと考える者の割合
-日本が最下位(52.4%)

・転職意向、独立・起業志向のある人の割合
-日本が最下位
-それぞれ、25.1%、15.5%

・機関投資家が重視する「環境・社会・ガバナンス(ESG)」要素
‐第1位:G要素の「経営理念・ビジョン」が53.5%
‐第2位:S要素の「人的資源の有効活用・人材育成」が36.6%
‐S要因のレーティングが高い企業は株価のパフォーマンスも高いという分析も存在している。

・機関投資家が人材関連情報に着目する理由
-第1位:「企業の将来性への期待」58.3%
-第2位:「優秀人材の確保」47.8%

・個人の「社外学習・自己啓発を行っていない」人の割合
-第1位:APACの中で日本(46.3%)

・企業の人材投資(OJT以外)への投資額は国際的に見て低い水準。
※GDP比で日本0.1%、米国2.1%、フランス1.9%、ドイツ1.2%、英国1.1%、イタリア1.1%。

・米ギャラップ社の従業員エンゲージメント調査(2017年)
-日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%
-調査対象139ヵ国中132位。先進国中で最下位。

・国内企業を対象にした調査では、従業員エンゲージメントスコアと営業利益率、労働生産性の間に相関関係を確認。

(出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_3.pdf)


今後、人材戦略と経営戦略との連動状況や当該取組の可視化を海外・国内投資家より問われることは確実です。その際に行われる説明とその確からしさで企業価値を測られることを念頭に置かなければなりません。

 

2.今後、経営者はどのような「人的KPI」を指標設定し活用すべきなのか?

(出典:ISO 30414「Human resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting」を和訳)

上記図表を見ると、一般的に企業が保有するデータから指標を作成し公表できる項目とそうではない項目があります。

この指標化が難しい代表項目の1つとして「スキル・能力」があります。

特に昨今のコロナ禍の影響で、教育に対しての投資を抑制し、一時的に費用を削ることで財務諸表上、売上減をカバーする企業も多くあります。

・人的資本に対しての投資の公開
・従業員の能力値コンピテンシーレートに基づく教育・育成計画

今後このデータを基にその運用状況が、企業として競争力や持続性の有無を判断されていきます。自社で「取り組んでいる」だけではなく、その取り組みを外部の人間が評価するということです。

「投資」の側面から、公開の義務を負うのは大企業です。

しかし評価されるという点において企業規模の大・小は関係がありません。具体的な項目を挙げると「採用」の指標があります。もちろん中・小企業は公開の義務は負いません。

企業志望者は事前に企業情報を調べます。そこで開示されている情報で志望の判断をしていきます。公開されている情報が少なければ、志望者が集まらないという状況が今よりも顕著に表れることになります。

つまり、公開の義務を負うのは今回は大企業ですが、中・小規模企業も出来る限り対応をしなければ直接・間接的に影響を受けることになります。

<経営者が設定すべき「人的KPI」>
・経営戦略上重要な人材課題を特定
・その課題を解決するためのアクティビティ(主な手段としては研修)を講じる
・対象者の何に作用するのかの明確化
・この一連が組織・会社に何を生むことになるのか

一連のロジックモデルを仮説として立案し公開し、外部の人の評価を得ることが経営者が試すべきことです。

 

3.今後、営業担当役員は、社内外に対してどのような「人的KPI」を活用してゆけば良いのか?

前述の経済産業省の公表データからも日本が世界に圧倒的に後れを取っていることが見て取れます。これを受け座長の伊藤先生は日本の伝統的価値観に対し問題提起をされています。

<日本における問題>
・経営者が従来型のメンバーシップ型雇用発想が強い
‐社員のエンゲージメントに対して楽観視
‐社員皆が付いてきてくれると「囲い込み」
‐社員の離職に対する危機感が希薄
・一体感を醸成化するために従業員の不揃いや凹凸が気になる

・経営者が人材に対してファジーまたはあまり触りたがらない

・情緒的な「社員への優しさ」が、社員の自立・自律を削いでいる
‐他社でも通じる人材の育成を阻害

・戦略性からは程遠い「かわいそう」文化がある
‐抜擢人事に対して躊躇し、「彼もそろそろ課長に」と勤務年数に従う
‐「選抜型研修」への着手の遅れ

・VUCA時代でも「仕事が人を育てる(OJT)」に過度に依存

・ヒトを「資源」と捉えて、管理の対象としている

上記問題提起に対して、企業における回答を具体的に用意し運用する旗振りは、経営者ではなく担当役員の方が負うケースが多いと思います。

伊藤版人材レポート内で6点の変革ポイントを掲げています。以下に記します。

1)【人材マネジメント】 人的資源の「コスト」管理ではなく、人的資本への「投資」として価値創造できているか?効果を見える化できているか?
2)【アクション】 人事が人事諸制度の運用・改善でなく、持続的企業価値の向上のための人材戦略を担っているか?
3)【イニシアチブ】 人材関係は人事部任せでなく、経営陣・取締役会が経営戦略と連動できているか?
4)【ベクトル】 同質性の高い内向きのコミュニティでなく、投資家・従業員に積極的対話をしているか?人的KPIを開示できているか?
5)【個と組織の関係性】 相互依存による硬直的な文化でなく、個の自律・活性化によりイノベーションに繋げられているか?
6)【雇用コミュニティ】 終身雇用や年功序列による囲い込み型コミュニティでなく、選び、選ばれる関係により多様でオープンなコミュニティになっているか?
同時に人的資本経営に関する調査β版において投資対効果の調査も実施されていて、「対応策はあるものの『未着手』の状態である」との報告をされております。

この状態は裏を返すと、他社に先んじて「人的KPI」を設定し活用した会社が勝っていくことになります。6点の変革ポイントを自社で問いた時に、実施できていないのであれば積極的に取り組まれることをおすすめいたします。

 

4.営業部門における「能力値・コンピテンシーレート」をどのようにすれば計測できるのか?

詳しくは動画にて述べています。是非動画をご視聴下さい。

頂いた個人情報は、ソフトブレーン・グループ内にて共有させて頂きます。ご了承の程、よろしくお願い致します。

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