社会人になって初めての長期連休だったゴールデンウィークが終わりましたが、心身ともにリフレッシュできましたか?入社1カ月は多くの新人にとって不安に揺れる時期だった思います。
その時期を乗り越えたあなたへ、前回の新人営業 第1回「マインド(意識)」に続いて、今回は「ノウハウ(知識・やり方)」についてお話しをしたいと思います。
そもそも、“ノウハウ”とは何ぞや?ということから話を始めると、ノウハウとは、専門的な知識や技術、手法や情報という意味です。know(知識)とhow(やり方)を組み合わせた英語の「know-how」から来た言葉であり、技術や知識、何かを行うときの進め方や手順のことを指しています。あなたの会社の中にも恐らく、先人の方々から受け継がれてきた営業ノウハウが存在する“はず”です。
本記事では、基本となる営業ノウハウについて伝授していきます。
1.【営業ノウハウ1】営業は5ステップ
2.【営業ノウハウ2】営業は逆三角形
3.【営業ノウハウ3】ソリューション営業
営業はどの業種・業界においても基本的には5つのステップで構成されています。
STEP1:事前準備、STEP2:アプローチ、STEP3:ヒアリング、STEP4:プレゼンテーション、STEP5:クロージングです。
それぞれのSTEPについて解説をしていくと、下記の通りです。
STEP1:事前準備
面談に向けて事前準備をおこなうステップ。
STEP2:アプローチ
お客様との信頼関係を構築し、お客様の興味・関心を引き上げ面談をスムーズに始めるためのステップ。
STEP3:ヒアリング
お客様に対して質問し、質問を通じて信頼関係を深め、お客様のニーズを深く理解するステップ。
STEP4:プレゼンテーション
お客様ニーズを満たす為の解決策と手段として自社の商品・サービスについて理解していただくステップ。
STEP5:クロージング
面談内容について振り返り、今後の進め方についてお客様と決定するステップ。
この5つのステップのどれかが欠けていたり不足していたりしたら、契約の受注率や成約の確率が下がってしまいます。
実際に営業の現場に出た際、「なぜ私は契約にいたらないケースが多いんだろう?」「案件化がしないんだろう?」と感じたら、必ずこの5ステップを思い出してみてください。焦りからこの5つを順番通りにおこなっていなかったり、疎かにしているかもしれません。
自身の営業活動を振り返ることができたら、次の段階としてあなたの会社のトップ営業パーソン(先輩)にどのようなステップで営業をおこなっているかを聞いてみてください。人によってその言葉は違えど、この5ステップを確実に踏みながら営業活動をおこなっているはずです。できる営業パーソンほど基本的な5ステップをいかに重要視しているかがわかるでしょう。
次にお伝えをするのは、営業は逆三角形と言うことです。下記の図を見てわかる通り、【営業ノウハウ1】で説明した5ステップは逆三角形の図で表すことができます。
これは全体の営業にかかる工数を100%とした時の比率をイメージしており、事前準備が最も比率が高く、ステップが進むほど比率は下がっていきます。
具体的な比率は、事前準備=50%、アプローチ=15%、ヒアリング=20%、プレゼンテーション=10%、クロージング=5%です。
図を見てあなたはどう思いましたか?
ステップが進めば進むほど重要度や難易度が増し、比率が高くなるのでは?と思ったかも知れませんし、え?事前準備に全体の50%も費やすの?と驚いたかも知れません。
しかし、そのイメージは差し替える必要があります。それでは一つずつ解説をしていきます。
■事前準備(50%)
そもそも今の時代=モノや情報が溢れ、お客様が商品・サービスの選択に悩む時代に何の準備もせず
いきなり営業をして売れたり契約がもらえるほど、世の中そんなに甘くはありません。
何の武装もせず丸腰で戦場に行くようなものです。むしろ事前準備の良し悪しで結果が決まってしまうと言っても過言ではないのです。
事前準備に力を注ぐことで精度の高い仮説を仕込み、自信を持って営業に臨むことができるようになります。
■アプローチ(15%)
もし、あなたがお客様だった場合、営業の方と接していきなり商品やサービスを売り込まれたらどう感じますか?
押し売られ感が満載でその方から買う気が失せるでしょう。
でも、いざ自分が逆の立場になった途端にこれをやらかしてしまう人がいます。
商品を比較していたら店員が寄って来て、一方的に商品の説明をされされた経験はありませんか?
その際押し売られての購入が嫌で、買う気が失せたケースがあると思います。
この事象は相手が会話をする状態・気持ちが整う前に話し初めてしまうと起こることです。
この状態を避けるために大事になるのがアプローチです。
“相手が大切にしているものを自分も大切にする”前提で、
共感を得る(共通性の発見)や、能力の提示、長期的なWIN-WIN関係構築の意図の提示、自己開示、好意を抱く(好意の返報性)を行います。
このようにアプローチでは、自分が何者かを伝え、相手が大切にしているものを聞くことから始めましょう。
■ヒアリング(20%)
事前準備の次に比率が高いステップです。
ヒアリングの目的は、
①事前準備における事前理解と仮説を検証すること
②お客様のニーズの全容を理解すること
③適切なプレゼンテーション(提案)に必要十分な材料を集めること、になります。
ヒアリングなくして的を得たプレゼンはできません。
多くの営業パーソンがこのステップをおざなりにしたり、
提案に足る内容を聞き出せないまま終えてしまい、失敗(失注)をしているのです。
またヒアリングでは、数多くのメリットがあります。
・聞けば情報が入る(相手が何を考えているのかがわかる)
・聞くことで仲良くなれる(お客様との共通面に焦点を合わせられる)
・相手が自己満足する(人は話すことで心が満たされる)
・聞けば知識が増える
・相手の人間性(タイプ)がわかる
・適切な質問により課題解決のプロ感を与えることができる
を得られるのです。
そしてもう気づかれたかと思いますが、ここまでで全体の85%の比率に達しています。
事前準備→アプローチ→ヒアリングの時点でほぼほぼ勝敗は決まってしまうのです。
またアプローチとヒアリングまでが双方向のコミュニケーションとなっており、その中で「信頼関係の構築」をしているということです。
「信頼関係の構築」とは『わかってくれてる感』であり、お客様はわかってくれている人から商品・サービスの提供を受けたいと思っているのです。
この『信頼関係の構築=わかってくれている感』の醸成を端折らずに行ってください。
■プレゼンテーション(10%)
さぁ、ここから比率が下がっていきます。
ここでお伝えをしたいのが、プレゼンテーションの鉄則として、いきなり商品・サービスの提案はしない、と言うことです。
なぜなら、せっかくアプローチとヒアリングで信頼関係を構築したにも関わらず、
突然スイッチが入ったかのように、商品・サービスの提案をしてしまうと、お客様は“押し売られた感”を持ちかねません。
ですので、提案の前に必ず「解決策(方法論)」を挟んでください。ヒアリングし、解決策を合意形成してから、
商品・サービスを提案することをお忘れなく。そして提案の際には、事例や証拠を提示し、更には選択式提示を行いましょう。
事例や証拠を提示することで説得力が高まり、選択式提示でお客様自身が選ぶことで満足度が高まるのです。
■クロージング(5%)
最終的なクロージングで行うことは、たった一つです。
それは、「いかがですか」+無言、です。
たったこれだけ?と思ったかも知れませんが、もう他にやることはありませんし、だから比率が5%なんです。
ただし、「いかがですか」と聞いた後、必ず“無言”の時間を作ってください。
いかがですか?と聞いておきながら、お客様に考える時間を与えず、自分がその無言の時間に耐え切れなくなり、
余分なことを被せるように話してしまう営業パーソンがいますが、これは完全な自滅です。
慌てず、焦らずお客様が考えて選択するのを待ちましょう。
もし、お客様の結論がその時に出なかった場合は、前進に向けた次回面談の目的と日時を決めて終了しましょう。
今は、モノや情報が溢れ、お客様が商品・サービスの選択に悩む時代になっています。以前からの御用聞きや物売りでは通用しません。
営業パーソンの役割は「売ることではなく、お客様のニーズを満たすこと」です。
営業パーソンはそのニーズを満たすために自社の商品・サービスを紹介し、その結果としてご購入していただいています。この営業手法を「ソリューション営業」と言います。
ニーズを傾聴し、お客様以上にお客様を深遠に考え、お客様の真の課題解決を目指し、長期的にWIN-WINな関係を構築する「ソリューション営業」は今の時代にマッチした営業手法です。
ご理解いただけましたか?要するに営業とは5つのステップで構成されており、その形は逆三角形となっています。事前準備よりもプレゼンテーションやクロージングに時間を費やしている正三角形の営業では今の時代に立ち打つことはできません。
本記事のノウハウ(知識・やり方)を駆使しながら、時代の変化に合わせてアップデートをしていってください。
次回の第3回は「スキル(能力)」についてお話しをしたいと思いますので、楽しみに待っていてください。それでは、またお会いしましょう!
文:日野マサヒロ