1.営業マインド①~あなたはもう、営業成果を上げている~
2.営業マインド②~営業センスは、すべて努力~
3.営業マインド③~営業を科学する~
2024年もあっという間に3ヶ月が経ち、気づけばもう新年度になりました。街では初々しいスーツ姿の新社会人を目にすると共に、新卒当時の自分を思い出します。
私は営業職として入社し、新人研修ではいきなり雑誌の広告掲載契約を獲得してくる飛び込み営業を担当したのを鮮明に覚えています。企画書だけを持ち、一日中、何十件と歩き回って突撃訪問をする日々。完全な気合と根性、質より量の世界を体験しました。まぁ、これはこれで当時は得るモノもあり、自分なりに話し方や入るお店、資料内容の伝え方を工夫するなど知恵を絞ることを経験できました。何度も何度も知らない店に飛び込んでは断られる中で得た度胸や諦めない心、そして、ド新人相手に企画内容を聞いてお客様から初契約をいただいた時の嬉しさや喜び、達成感は今でも忘れられません。
それからあっという間に時が過ぎ、営業する環境も随分変化しました。今やモノや情報が溢れ、お客様が商品・サービス選択に悩む時代です。私が新人だった頃の営業スタイル、いわゆる御用聞きやモノ売りではもはや通用しません。
そこで今回の記事から「新人営業」をテーマに「第1回:マインド(意識)」「第2回:ノウハウ(知識・やり方)」「第3回:スキル(能力)の全3回」に分けてお話しをします。この春から営業職として入社しデビューする新人や2・3年目の方、また新卒が配属されてきた上司・先輩の方々も是非、お読みください。
突然ですが、あなたは、自ら希望して営業職になりましたか?それとも資格もないし、消去法で仕方なく、たまたまですか?「営業」をネットで検索すると、「営業=きつい」「営業職 向いてる人」「営業コツ」と言ったワードが関連性の高い検索結果として出てきます。
いきなりこのようなキーワードを並べられたら少々ネガティブな気持ちになってしまうかもしれません。しかし、実はあなたはこうして社会に出る前に少なくとも一度は「営業」を経験し、営業成果を上げている自覚をお持ちでしょうか。
それは就職活動です。就職活動で商品となるのは「自分自身」であり、お客様にあたるのは会社です。あなたは就職活動で「採用してください、お願いします!」とひたすらにお願いしましたか?恐らくそんなことはしていませんよね。
<就職活動における内容>
・希望の会社の沿革や経営理念、商品サービス概要、業績や中期経営計画等を読み調べる。
・自己分析をして会社のニーズと重なる自分のアピールポイントを探す。
・履歴書やエントリーシートにアピールポイントに関連する話題を取り入れておく。
・面接で想定される質問に対する答えを事前に準備しておく。 等々
こうした工夫によって面接官が「採用する」という行動を起こしたからこそ、今の会社にあなたは就職できています。
実は実際の営業活動も就職活動と同じです。
たくさんの商品やサービスの中から選んでもらうには、「買ってください、お願いします!」だけでは通用しません。もちろん、何事にも熱意は必要ですが、それだけで買ってもらえるほど、世の中は甘くない。面接官に「採用する」という行動を起こさせたように、お客様に「買おう」という行動を起こしていただく。
コミュニケーションによって「相手を動かす」活動こそが営業なのです。
よく「営業」には、生まれつきの「センス」や「人間性」が必要だという人がいますが、そうではありません。なぜなら、生まれた瞬間に営業向きな人やそうでない人、売れる人と売れない人が決まっている訳がありませんから。努力次第で何とでもなるので、自分には営業のセンスが……とか、自分は営業には向いてないんじゃないか……と悩む必要はありません。安心してください。営業に必要な能力はすべて「後天的なもの」です!さらに言うと、おしゃべりが苦手だから自分は営業に向かないなどと始める前から落ち込まなくても大丈夫です。しゃべりが上手で得意だから商品やサービスが売れるものではありません。口下手なトップ営業パーソンは世の中にたくさんいます。世の中の一般的な営業イメージに惑わされないようにしてください。あなたが憧れる先輩方もはじめからトップ営業パーソンだったのではなく、いろいろな失敗から学び、先人から教わり、努力を積まれてきたはずです。
では新人であるあなたは、まずどのような努力から始めれば良いか?
例えば「話が下手、苦手」という個人特性を“足りないところ”として認識し、それを克服したいのであれば、社内でも他所でも構いませんので、こんな風になりたいと思っている人にシンプルに教わりましょう!一番の近道は、身近な先輩を真似ることです。
「まなぶ(学ぶ)」と「まねる(真似る)」は語源が一緒であり、昔は「まねぶ」といわれていたと言います。自分が「まね(真似)」したいと思う人のやり方を「まねぶ」ことから始めるのは、いわば学びの基本です。この先輩おもしろいな、この雰囲気や話し方を真似したいなと思う先輩がいたら、まず自分なりに真似して練習をしてみる。その後、その先輩が余裕のある時間や、食事・休憩時間・業務終了後などに自分なりに練習したセールストーク等を聞いてもらい、フィードバックを受けましょう。努力なくしてセンスあらず、このような練習が、営業センスを育てます。これは営業の世界にかかわらず、スポーツの世界でも、音楽の世界でもすべて共通です。
前述の営業マインド②では努力なくしてセンスあらずといったお話しをしました。では営業は努力したら必ず成果が出るのか?はたまた絶対に報われるのか?というと、これはまた違う話になります。
営業には商談する相手があり、同業というライバルもいます。結果は周囲や環境に影響されやすく100%の保障はないものです。これはスポーツの世界とよく似ています。スポーツの世界でも、選手全員が大会で優勝という結果を手にできるわけではありません。勝者がいる一方で敗者が必ず存在します。しかし全員が日々努力しています。これと同じです。
「結果」を求めるのであれば、まず大切にすべきは「プロセス」であり、「正しく報われる努力をする」ことです。「結果」は後から付いて来ます。また結果を意識しすぎると、結果が出せない時にモチベーションが下がります。いずれ心の病にもなりかねません。
そうならないためにどのようにすれば良いのか?自身が周囲や環境に左右されず、結果が出なくてもモチベーションを維持できるよう努める必要があります。これは、営業プロセスに対して正しい努力を続けることにほかなりません。
私はよく営業プロセスをパン工場に例えています。パン工場では小麦粉、水、イースト菌などの材料から、次の4つの工程でパンを作り上げています。
①素材の配合、②生地をこねる、③発酵させる、④焼く。この4つの工程が1つでも欠けていたり、順番を変えたりするとパンはできません。もし美味しいパンが出来なかったらとしたら、発酵の温度や時間にミスがあったかのかもしれません。生地のこね方が足りなかったかもしれません。そもそも材料に問題があったのかもしれません。決して「心を込めてこねていなかった」といった精神論ではなく、そこには科学的な理由があるはずです。
これは営業でも同じことです。営業は引き合い(問い合わせ)をもらってから、「受注」という結果に向けて、大きく4つのプロセスを踏んでいきます。
一例をあげると①面談、②案件化、③提案、④仮受注。もし受注まで至らなかったら、この4つのプロセスのどこかに問題があったからです。面談の段階でヒアリングが不足していたかもしれませんし、提案の仕方が悪かったのかもしれません。どこに問題が発生したのかを冷静に分析し、次回以降に注意しカイゼンしていけば良いのです。
常にプロセスを振り返り、検証をする。それを繰り返すことで、面談の後の提案に結びついていないのか、見積り提示まで順調に進んで稟議の段階で成約率が下がっているのかなどが見えてきます。このように客観的に見ることで自分の営業活動にはどういう弱点があるのかがわかり、失敗が少なくなっていくのです。おのずと商談の成功率も上がっていきます。
最初のうちは少し難しいかもしれませんが、自分の営業プロセスを考え設計し、分析をすることで営業活動は「科学的」なものになります。分解して「カイゼン」が可能になるのです。
先ほどお伝えしたパン工場に窓を開けてプロセス(工程)が見えるようにするのと同じように、自分の営業プロセスを見える化してください。結果に至るためには、それに至るための然るべきプロセスがあります。逆に、然るべきプロセスの延長線上にしか結果はついてきません。これが正しく報われる努力であり、営業を科学することなのです。
ご理解いただけましたか?なんだかワクワクしてきませんか?営業はそもそも楽しいものですし、トップ営業パーソンの方々は「営業は楽しい」とおっしゃいます。このマインドこそが営業に欠かせないものなのです。
次回の第2回は「ノウハウ(知識・やり方)」についてお話しをしたいと思いますので、楽しみに待っていてください。またお会いしましょう!
文:日野マサヒロ