1.エンタープライズ営業とは
2.「エンタープライズ営業」の特徴
3.「エンタープライズ営業」を効果的に実施する方法
4.信頼関係の構築
5.「プロファイリングセールス®」の実践
6.「エンタープライズ営業」で成果を出すために、漠然としたイメージだけでなく日々の具体的な行動を
エンタープライズ営業とは、「大企業」や「公的機関」などをターゲットとした営業手法のことです。
<メリット>
・多くの部署があるので、ひとつの部署で自社の商品・サービスを導入してもらえれば、複数の部署で導入してもらえる可能性がある。
・複数の事業方針や複数のプロジェクトが同時進行していることが多いため、自社が取り扱う商品・サービスによっては、複数の商材の導入を見込むことができる。
・社員数・職員数が多いため、ユーザー数による取引規模拡大を見込むことができる。
自社にとって大きな取引をする機会が得られるだけでなく、実績もアピールできるようになります。そのため「エンタープライズ営業をやろう!」とお考えの方も増えてきております。
しかし、実際に「エンタープライズ営業」を実施しても成果に繋げることが難しいとお悩みの方も少なくありません。
本記事では、「エンタープライズ営業」の中でも、「ターゲット企業内での接点の拡大」に絞って解説することで、成果に繋げる方法のヒントをご提供いたします。
「エンタープライズ営業」を理解するためには、始めに他の営業手法との違いを把握しておくことが必須です。対比として挙がることが多い「The Model型営業」を例示して違いをご説明します。
まず「The Model型営業」は、始めに【広く設定】したターゲット層を営業活動の中で徐々に顧客を絞っていき、ある程度顧客数を限定しておくという特徴があります。この手法は広く新規顧客獲得型営業などでよく用いられます。
一方「エンタープライズ営業」は、「The Model型営業」と比べて最初の段階でターゲットを広く設定しません。ターゲットを適切に【絞り込む設定】をすることから始まります。絞り込んだ後、ターゲット顧客内で接点を「広げていく」活動を行うことが特徴です。
「エンタープライズ営業」を効果的に実施するためには
・組織図やそれに伴う相関図を作成する
・顧客とのコミュニケーションを深める
などが挙げられます。
「エンタープライズ営業」の認知度が高まっていると同時に、成功例に基づくポイントも広く知れ渡るようになりました。情報収集しようと思えば多数のノウハウを知り得ますが、理解するだけでは成果を出すことはできません。
実際に行動して成果を出すために、始めにすべきことを2つのポイントに分けて解説していきます。
信頼関係の構築
プロファイリングセールス®
(1)「信頼関係の構築」の必要性
ターゲット企業内での「相関関係」「承認ルート」といった情報は獲得すべき重要なポイントですが、容易に獲得できるものではありません。
例えば「承認ルート」で考えてみましょう。商談の前に組織図を見ておけば、商談相手の後ろにどの役職の人が控えているかを想像できます。事前のリサーチが不足していたとしても、商談中のヒアリングで、役職者の決済権限も確認ができるかもしれません。
しかし、決裁権限を持つ役職者の「氏名」「性格」「判断の指向性」「組織としての判断基準」など、営業として本当に聞きたいと思う項目を早い段階で聞きだすことは難しいでしょう。個人情報のように組織にとってセンシティブな情報が含まれている可能性が高く、担当者の一存で簡単に共有することができないからです。
他にも様々なケースはありますが、情報を開示していただくことが困難であることは想像に難くないでしょう。そのようなセンシティブな情報を獲得するためにすべきことは、一定以上の「信頼関係の構築」です。
信頼関係の構築が不十分のままで商談を何とか繋げたとしても、情報不足によって決裁者の納得感が得られなければ成果に繋がらない可能性が高まります。
逆に言えば、企業の問題や情報を社外の営業担当に共有してもらえるほどの信頼関係を築いていれば、決裁に至るまでのポイントを押さえて営業活動に臨むことができます。
(2)「信頼関係の構築」のための具体的な実践例
「信頼関係の構築」だけのために限られた商談時間を使うことはできません。商談時間内の活動は全て「自社用品・サービスを購入いただく」ことがゴールだからです。では、ゴール達成を目指しつつ「信頼関係の構築」と商談をどのように両立させればいいのかを、ビジネスシーンの一部を具体的に取り上げて解説します。
・商談前のアイスブレイク(軽い会話)
アイスブレイクの内容として有名な「木戸にたちかけし衣食住」はご存じでしょうか。「気象」「道楽(趣味)」「ニュース」「旅」「知人」「家庭」「健康」「仕事」の頭文字と「衣食住」を付け加えた言葉です。初対面の人とでも会話がしやすくなるとされる題材です。
研修やマニュアルにも活用を推奨されることの多い「木戸にたちかけし衣食住」ですが、皆様は目的や意図をもって活用できていますでしょうか。
実は、アイスブレイクも信頼関係の構築のチャンスです。「共感を得る」ことや「自己開示」、「好意の返報性」を意図的に活用して「Yesセット」を取りにいくことが積み重ねにより「信頼関係の構築」に繋がることとなります(※弊社のコンサルティングではそのための具体的な会話の流れを構築します。本コラムでは文章量の制限から割愛することにご容赦ください)。
アイスブレイク一つでも目的を持って意図的に実施することで「信頼関係」は構築されていきます。
・ヒアリング
もし、「ヒアリング」のプロセスにおいて、プレゼンテーションのための情報収集という一つの目的だけのために行われているとしたら、ここでもチャンスロスが発生していることになります。
顧客から「課題」を傾聴するためのフェーズとも言える「ヒアリング」において、少しの工夫で「信頼関係の構築」にも繋げることができます。
例えば、相手が気持ちよく「応える」ことができるように「質問」を投げかけることも工夫の一つです。シーンに応じて、徹底的に相手のことを話題にし、相手が自身のことや自身の事業のことなどを話す機会を設けてみて下さい。「人は話すことによって心が満たされる」という心理的効果があります。あえて優越感や自尊心を満たすための機会を設けることで、その心理的効果を発揮しやすい状況を作り出せます。その結果、信頼関係を構築することに繋がります。
以上、営業プロセスのアイスブレイク・ヒアリングを例に解説しました。
ビジネスにおける商談時間という限られた時間の中で、「信頼関係の構築」を明確に「意識」して取り組んでみてください。「販売」だけを目的とした商談より、有意義な商談になるでしょう。
「信頼関係の構築」をターゲット企業内の多くの方と積み重ねていくためには、関係者ごとの対応方法も熟知しておく必要があります。すべての人に対して同じ対応をしても、信頼関係の構築は難しいと言えるでしょう。現場担当者の人には良い対応として受け止められていた言動が、決裁者にとっては悪い対応と受け止められる場合もあるからです。
ここで役に立つ手法が「プロファイリングセールス®」です。
(1)プロファイリングセールス®とは
最新の脳科学・心理学の研究に基づき、セールスにおいて「顧客の使用する言葉」や「顧客の行動」などから、顧客をプロファイリングし、そのプロファイリングの分析結果に基づき、顧客に強く影響するセールス手法を選択し、実践することで、顧客の購買意欲をより一層高め、顧客に前向きな意思決定をより強く促すためのセールス手法のこと。
(2)代表的な4つの視点
「信頼関係の構築」だけのために限られた商談時間を使うことはできません。商談時間内の活動は全て「自社用品・サービスを購入いただく」ことがゴールだからです。では、ゴール達成を目指しつつ「信頼関係の構築」と商談をどのように両立させればいいのかを、ビジネスシーンの一部を具体的に取り上げて解説します。
・目標達成型⇔リスク回避型
「意思決定の傾向」の観点で言えば、「目的達成型」「リスク回避型」の2つに属性を分けることができます。「意思決定の傾向」の傾向を知ることで、どのような会話の流れが受け入れやすく、理解を得られやすい表現方法を予測することができるようになります。
・論理的⇔感情的
「思考の傾向」の観点で言えば、「論理的」「感情的」の2つに属性を分けることができます。「論理的」な思考を持つ方は数値的根拠を用いる傾向が、「感情的」な思考を持つ方は擬音での表現をする傾向があり、プロファイリングする中でわかりやすい部類です。
「エンタープライズ営業」をターゲット企業に向けて行っていく時、営業個人で「信頼関係を構築」し、表に出づらい情報を得た上で、「プロファイリングセールス®」を実践してみましょう。属性に応じた効果的なコミュニケーションをすることができ、「エンタープライズ営業」を成功に向けて大きく前進できます。
正確に判別するためには「プロファイリングセールス®」を詳しく学ぶ必要がありますが、簡易的であれば相手の発言内容や言葉遣いの特徴によってターゲットの顧客がどの属性であるかを判別することはある程度可能です。ぜひ、関係者の言動を丁寧に観察してみて、属性に適した信頼関係の構築に臨んでみて下さい
「エンタープライズ営業を実践しよう!」と謳っているだけでは成果は出ません。実践するために行うべき具体的な行動やトークを戦略的に考える必要があります。本記事では、エンタープライズ営業をより効果的なものとするための戦略として「信頼関係の構築」「プロファイリングセールス®」のエッセンスをお伝えしました。
・「自社にとってのエンタープライズ営業」とは何か
・競合他社にはない独自性を持った具体的な行動とは何なのか
を今一度振り返ってみてください。概念論で終わらせることなく、手順書としての「マニュアル」でもない、自社独自の「エンタープライズ営業の型」を構築して、成果を上げていただけることを切に願っております。
宮田 純(みやた じゅん)
ソフトブレーン・サービス株式会社 シニアコンサルタント
一般財団法人 プロセスマネジメント大学 事務局長
1977年(昭和52年)、北海道出身。
大学卒業後、新卒で人材サービス会社に入社(営業職)。25歳で営業リーダー。30歳でBPO事業を立ち上げ、営業、業務設計、人員採用、業務マネジメント、PJT管理、一連の全ての業務を行い、事業化を推進。3年間で110名の事業本部となる。
その後、医療に特化した人材サービス会社に転職。営業部門の事業部長。72名のマネジメントを行い、業績向上、入社1年2ヶ月後のマザーズ上場に貢献。「遠隔診療」事業を立ち上げ、政府が推進している遠隔診療事業化のさきがけとなり、1年で正式な事業部のひとつとなる。続けて「看護・介護派遣」事業を立ち上げ、同じく1年で事業部となる。
上記の経験を活かし、ソフトブレーン・サービスに入社し、現在に至る。
頂いた個人情報は、ソフトブレーン・グループ内にて共有させて頂きます。ご了承の程、よろしくお願い致します。